【完】こいつ、俺のだから。



…………。



確かにあたしは、昔から、行事のあとはよく体調を崩すことが多かった。


だけどそんな昔のこと、すっかり忘れていたのに。



本人も忘れていたことを、なんであんたが覚えてんの……?




「頑張りすぎてんだよ。自分の限界くらい知っとけ。無理しすぎて倒れたらシャレになんねーだろ。

バカはバカらしく、風邪なんてひかねぇで笑っとけよ」



口の悪い言葉なのに、なぜか心配そうな弱々しい声。



その手はそっと、あたしの手を握った。




「佐野?」



「……どうすれば、お前は元気になる?」



「……あたし、元気だよ?」




「嘘つくな。弱ってんのくらい知ってる。何年テメー見てきたと思ってんだ。

もうちょっと寂しがれや……」



小さな声は、ところどころ聞き取れない。



だけど佐野、あたしさ。



「あたし、寂しくないよ」




繋いでいる手を、ギュッと握り返した。



ふたつ重なる手から顔をあげ、佐野を見つめる。




「だって今、佐野がいてくれてるじゃん」



< 201 / 418 >

この作品をシェア

pagetop