【完】こいつ、俺のだから。
…………。
確かにあたしは、昔から、行事のあとはよく体調を崩すことが多かった。
だけどそんな昔のこと、すっかり忘れていたのに。
本人も忘れていたことを、なんであんたが覚えてんの……?
「頑張りすぎてんだよ。自分の限界くらい知っとけ。無理しすぎて倒れたらシャレになんねーだろ。
バカはバカらしく、風邪なんてひかねぇで笑っとけよ」
口の悪い言葉なのに、なぜか心配そうな弱々しい声。
その手はそっと、あたしの手を握った。
「佐野?」
「……どうすれば、お前は元気になる?」
「……あたし、元気だよ?」
「嘘つくな。弱ってんのくらい知ってる。何年テメー見てきたと思ってんだ。
もうちょっと寂しがれや……」
小さな声は、ところどころ聞き取れない。
だけど佐野、あたしさ。
「あたし、寂しくないよ」
繋いでいる手を、ギュッと握り返した。
ふたつ重なる手から顔をあげ、佐野を見つめる。
「だって今、佐野がいてくれてるじゃん」