【完】こいつ、俺のだから。
「ほら、手」
お互いドーナツを食べ終えると、佐野がそう言って手を差し出してきた。
「?」
「迷子になられたら迷惑だから、とっととつかまれ」
「別にならないけど」
「そばにいろっつっただろ」
強引に、無理やりに、ギュッと手を繋がれる。
佐野の大きな手が、いとも簡単にあたしの手を包み込んだ。
胸がじんわりと温かくなる。
「いい加減、買い出し行くぞ」
「うん」
……せめて今だけは、そばにいさせて。
ううん、嘘。
もうちょっと、そばにいたい。