【完】こいつ、俺のだから。



看板からすでに離れかけていたあたしに、なおも髪のことを聞いてきた佐野に動きを止めてしまった。



光は何食わぬ顔でスルーっと、そりゃあドライブスルー並みににあたしと佐野の横を通り過ぎてアイスをもらいに行きやがった。



しかも、ソーダ味もらってる。



あたしも狙ってたのに。



とりあえず、残りのソーダ味は必ずあたしが救い出してやらねば。



そのためにはまず、こいつとの会話を終わらせる必要があった。



「切らないよ。髪はあたしの唯一の自慢だもん」



先輩も、光も褒めてくれたことがあるこの髪。



中学の頃、周りの人に言われた。



〝仁菜ちゃんの髪、サラサラしててきれいだね〟って。




だけどあたしの言葉のなにが不服だったのか、佐野はどこかムスッとした表情になる。


拗ねてるような、悔しそうな、そんな顔。



……なぜ?



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