【完】こいつ、俺のだから。
「あ、そうだ。佐野と前野〜」
そのとき、担任の佐野と前野さんを呼ぶ声がして、佐野はビクッと我に返り、あたしから手を離した。
「委員のお前らは後夜祭準備があるらしいからそっちに行けってよ。放課後もあるらしいから頑張れよー。
そんでもって、たった今アイスが完売した。全員もらったかー?」
見ると先生が、今思い出したかのようにゆるーい口調で後夜祭準備の説明をしている。
……へぇ。
佐野、今日は放課後残るんだ。
「って、え!?」
い、いいいい今!!
先生、アイスなくなったって言った!?
「先生!あたしアイスもらってません!」
挙手して必死にもらってませんアピールする。
はいはい!あたしのソーダ味は!?
「おー、まじか中原、ごめんな」
謝る気ねぇだろ中年オヤジ。
大きく息を吸って、ため息を吐く。
まぁいいや。
「ちっ。準備とかめんどくせぇな」
隣で舌打ちをした佐野は、ダルそうにそんなこと言う。
そして、
「おいブス」
「あ?」
「俺今日は送ってやれねぇけど、まっすぐ家に帰れよ」
あんたあたしの父さんか。