【完】こいつ、俺のだから。
「別にいい。気にしてない」
「……嘘だ。怒ってる」
「怒ってねぇよ」
そう言って、靴が履けると俺は先に歩き出した。
……このイライラは、あいつ、戸田に対してだ。
それと、そんなやつに自信をなくしてる自分が、苛立たしくて仕方ない。
なんでよりにもよって、こいつのメイド姿をあいつに見られちまったんだ。しかも、俺より先に。
「先輩と、なに話したの?」
俺の一歩後ろを歩いてるこいつは、追いつくのに必死になりながら聞いてきた。
「なんも。世間話だよ。いい天気ですね〜とか」
自分でもわかるくらい、見え見えな嘘をつく。
俺の言葉にこいつは、眉尻を下げ悲しそうな顔を見せた。
あーもう、そんな顔すんなよ。
なんでいつも、あいつ絡みのことになると、お前はそんな表情を見せるんだ。