【完】こいつ、俺のだから。
キスした理由
――……佐野の唇が触れたとき、あたしの思考は停止した。
柔らかい感触と熱が、唇を覆い尽くす。
目の前には佐野の整った顔があって、何をされてるのか理解するのにすごく時間がかかった。
けどすぐに唇は離れて、至近距離で絡み合う視線にあたしは戸惑いを隠せない。
佐野の真剣味のある瞳が、あたしをじっと見つめていた。
「……」
「………」
「…………」
「……………え」
……え?
「……あれ? 俺は今、何をした……?」
「は?」
ちょっと待て。
突然何を言い出すんだこいつは。
「いや、だから俺は今、ナニヲシタ?」
短期記憶障害っすか?
あまりに衝撃な出来事のせいで、脳がショックを受けて、一部記憶が失われてるのかもしれない。
かわいそうに。
いや、いやいやいやいやいやいやいや、ここでショックを受けるのはあたしの方だよね?