【完】こいつ、俺のだから。
「あの、キスしましたよね?」
「きす、だと……!?」
おい大丈夫かこいつ。
あたしだってものすっごくテンパりたい状況にあるのに、あまりにも佐野が動揺しているせいか、なぜか冷静でいられた。
「お、落ち着け落ち着け……落ち着くんだ俺。きっと何かの聞き間違いだ。たぶん魚の鱚(きす)って言ったんだろう。ゆっくりでいいからもう一度こいつに聞け、聞くんだ悠月。お前にならできる。
お、おう、行ってくる……」
……心の中の自分との掛け合いが、全部言葉に出てますけど佐野さん。
まぁ、そのおかげで自我を取り戻したようだから良かったけど。
深く息をついて落ち着いた佐野は、再びあたしを見据えた。
「な、なぁもう一度聞く。俺、お前に何した?」
「キス」
「魚の?」
「接吻」
「……!!!」
佐野はカッと目を見開いた。