【完】こいつ、俺のだから。
「佐野なら今朝、先生に呼ばれてたよ。
前野と一緒に」
朝学校に着くと、もうすでにみんな文化祭のスタンバイをしていた。
あたしも準備をしなきゃだが、その前に佐野の姿が見当たらなかったため、楢崎に居場所を聞いていたところだった。
どうやらヤツは実行委員で呼ばれたらしい。
「前野さんと……か」
「たぶんもうすぐ帰ってくるんじゃね?」
「そっか。ありがと」
「いえいえ。
それよりどう?俺のこの執事姿!超似合ってるっしょ!」
「そりゃーもう、よくお似合いですよ」
楢崎はもう執事姿に着替えていて、完璧営業モードだ。
爽やかさをこんなところにまで本領発揮している。
「じゃ、中原にだけ特別♪
……お嬢様、お手をどうぞ」
いつもより低ボイスでそう囁いた楢崎は、そっとあたしの手を取った。
いきなりの行動に、胸がドキッとする。