【完】こいつ、俺のだから。
「お前のこと好きだからキスした」
佐野は顔を上げながら、そう言った。
その目はあたしを、強くまっすぐに捕まえる。
心臓がドキンと音を立てた。
「本当はするつもりなんてなかった。
ずっと待ってるつもりでいたけど、俺にはもう時間がない。
なのにお前、全然俺を見てくれないから、いい加減俺のこと見て欲しくて、意識して欲しくて、キスした」
うまくまとまってない言葉で、本音をひとつひとつ不器用にこぼしていく佐野。
「お前の言う通り、俺はズルいヤツだよ。
お前のこと1番に考えてるフリして、本当は自分のことしか考えてない。
いいヤツでいたいのに、お前を前にすると、焦って、理性保てなくて、自分のことしか見えなくなる。
たまに、お前のこと笑顔にしてやれなくてすげぇヘコむ。
けど、いつだってそばで笑っててほしい。すっげぇワガママなんだ、俺」
……そんなの、知らない。
そんな素振りも、言葉も、全然聞いたことがない。
だってあんたは、いつもどこか傲慢で、弱音なんて見せなくて、自信満々で強気な佐野悠月だから……
そんな風に想ってくれてたなんて、あたし知らない……。