【完】こいつ、俺のだから。
初恋とサヨナラ
「いらっしゃいませお嬢様。何名様でしょうか?」
「きゃー!超かっこいい!メアド教えてください!」
――スパッ。
「お嬢様、こちらがメニューになります。お決まりになりましたら私共にお申し付けください」
「あの、彼女いるんですか!?」
――スパッ。
「……仁菜。皿に飾り付ける苺、そんな般若みたいな顔で切らないでくれる?」
「え」
光にそう言われ、我に返る。
メイド姿の光は、その可愛い顔をしかめてあたしを怪訝そうに見ていた。
どうやらものすごい顔で、あたしは苺を切っていたらしい。
ちなみに今あたしがやってるのは、ケーキに飾るフルーツカットだ。
注文伝票で届いた小さなケーキは、皿に置くといかにも〝買っただけ〟に見えるので、周りにフルーツを飾るそう。
これでかも作ったように見える工夫をしているワケだ。
いわゆる、いかにも作ってますよ詐欺だ。
本来なら前日から仕込みをしなきゃなのだが、急遽決まったことで、今回は特別に許可がおりたらしい。