【完】こいつ、俺のだから。
「佐野くんが女の子のお客さんに絡まれるたびに、そんな風にフルーツ切ってたらフルーツがかわいそうだよ」
「…………」
無意識のうちに、あたしの神経は佐野に集中していたらしい。
佐野が今なにをしてるのか、
佐野は今誰と話してるのか、
そんなことばっかり気にしてる。
そしてその相手が女の子だってわかると、イライラして、モヤモヤして、複雑な気分になる。
「光……。話したいことがある」
まだ光には言ってなかったこと。
今さっき、気づいたホントの気持ち。
「うん、じゃあちょっと抜けよ。5分くらいあたしら2人が抜けても、客も少ないしみんな困らないだろうから」
ニッと八重歯を見せながら、嬉しそうに笑う光はあたしの手首をつかんで教室から連れ出した。
そして、同じ階にある講義室に入る。
ここは今日の文化祭では使われないから、ふたりきりだ。