【完】こいつ、俺のだから。
「あいつに幸せにしてもらえよ。
俺にしたらあいつは憎たらしいけど、そういう一面も含めて仁菜の素顔を引き出すことができるのはあいつだけだと思うし」
「先輩……」
「仁菜、たまに俺に気を遣ってただろ?でも佐野くんには遠慮なんてしてなかった。本気で怒ったりしてただろ?」
「……」
確かにあたしは、先輩が年上であることに気を遣ってたし、嫌われたくないからって理由で素を見せてなかった。
……だけど佐野には、ギャグ言ったり、怒ったり、弱音を吐くこともできた……。
「そういう風に本気でぶつかれる相手がいるのって、本当はすごいことだと思う。
だから、大事にしろ」
もちろん、大事にしたいと思う。
けど、
「……先輩にはそんな人、いないんですか?」
「……え?」
「先輩の身近な存在で、大切に想ってくれる人、素を見せれる人っていないんですか?」
例えば佐野みたいに、まるでずっとそばで見守ってくれてるような存在。
先輩にとって、1番身近な人って、たぶん……。