【完】こいつ、俺のだから。
「こんにちは……」
ペコッと頭を下げると、彼女は少しうろたえた。
だけどすぐに、しっかりと強い目であたしを見据える。
「……あなたに直人は、渡さないからっ!」
「「え」」
見事、先輩とあたしの腑抜けた声が重なった。
「元カノだかなんだか知らないけど、あたしはあなたより直人のこと知ってるし、あなたより好きな自信がある!」
「ちょ……!彩なに言ってんだよ!落ち着け!」
先輩は恥ずかしそうに頬を赤く染め、彩さんのもとへ行き口を塞ごうとする。
「だって、直人はまだこの子のことが好きなんでしょ?だからあたしのことも一度はOKしてくれたけど、すぐに離れて行った!」
あたしは彩さんの言葉に、呆然と立ち尽くす。
……いや、たぶんそれは違う。
先輩にとって、1番近くにいるあなたが誰よりも大切なのは、目に見えてる。
先輩はただ、あたしのせいで前に進めずにいただけだ。