【完】こいつ、俺のだから。
あたしはもう一度、彩さんの横にいる先輩に目を向けた。
「先輩にとって、素をだせる相手はすぐそばにいるじゃないですか」
大きく目を見開いた先輩は、一瞬たじろぐと、隣にいる彩さんを見つめ、
……やがて、微笑んだ。
「あぁホントだ。近すぎて気づけなかった」
「?」
先輩とあたしがふっと笑みをこぼすと、彩さんがだけが頭上にハテナマークを浮かべ、首を傾げていた。
大丈夫、きっと。
もうすぐ彩さんに伝わるはずだ。
動き出した先輩と、ずっとそばで見守ってきた彩さんなら、きっとうまくいく。
あたしはそれを、素直に応援したいと思った。
「ありがとう仁菜。今度こそ本当にさよならだ」
「はい。こちらこそ、今まで本当にありがとうございました」
初恋にさよならをして、あたしは新たな気持ちと向き合う。
そのために、あたしはふたりに別れを告げ、ある人の元へ向かった――。