【完】こいつ、俺のだから。
……あたしがバカだったの?
佐野と過ごした日々が、いつの間にかあたしにとって大事なものになって、
いつしか手放したくないと思う程、大切な存在になってたのに。
……それは全て、偽りに騙されてただけだったの……?
「もういいだろ。離してくんね?」
あたしが掴んでる制服の裾に目を向け、めんどくさそうにそう言った佐野。
……違う。こんなの佐野じゃない。
だって佐野は、いつだってあたしのことを見守ってくれた。
その不器用な優しさで……。
「……約束は……?」
「え?」
「またドーナツ屋さんに連れてってくれるっていう、約束は!?」
「……!」
一瞬揺らいだ佐野の隙をつくように、もう片方の腕を掴んだ。
「佐野に貸したDVD、まだ返してもらってない!感想だって、聞いてない……!
続編、もうすぐで発売されるのに……!」
「……それは、明日返す」
「いらない!佐野がずっと持っとけバカ!」
こんなときでも素直になれない。
こんな遠回しな言葉でしか伝えられない。
あたしあんたと、離れたくないって。