【完】こいつ、俺のだから。
大切だから
【佐野 悠月 side】
――『佐野。あたし別に大丈夫だから』
あいつが指切って保健室に行こうとしたとき、どうして俺は意地でもついて行かなかったんだろう。
未だにそんなことを思う俺は、未練がましいかもしれない。
……嫌な予感がしたんだ。
あのとき、教室を出て行こうとするあいつの腕を咄嗟に掴んで引き止めた。
そうでもしないと、このまま手放したらあいつが俺の前から消えちまうような気がしたから。
文化祭の仕事の交代の時間になって、俺はすぐに制服に着替えて教室から飛び出した。
急いであいつのいる保健室に向かったけど……。
扉を手にかける前に、俺は絶望に打ちひしがれた。
そのとき見たのは、あいつと、ベッドに座ってる戸田直人が笑いあって……
そして、額にキスをしていたところ。