【完】こいつ、俺のだから。
――嫌な予感はたいてい当たってしまうものだ。
うまく働かない空っぽの頭ん中で思ったことはひとつ。
……なんだ。そういうことか。
それだけだった。
わかってた。
俺がどれだけあいつのこと必死に振り向かせても、引き寄せても、
あいつの中に残ってる気持ちには、敵わないってことくらい。
俺はすぐにその場を後にした。
そのとき廊下の片隅でひっそり隠れてた女と目があったけど、
そんなの気にしてられるほど、俺の精神は強くなかった。
……奪われるのは、一瞬だ。
俺はあいつのことを振り向かせることができなかった。
あいつらはもとに戻っただけ。両想いだったんだ。
すべてを理解したときには屋上にきて、ひとりたそがれてた。
もう全てがどうでもよくなった。