【完】こいつ、俺のだから。
「仁菜ちゃんがいることはわかってたんだけど、やっぱり伝えたくて……。
ごめんね?迷惑だったよね」
「いや……」
迷惑なんてこれっぽちも思ってない。
むしろ、もうあいつの心は俺のもとには帰ってこないんだ。
いや、最初っから傾いてすらいなかったのかもな。
所詮、偽物は偽物だってワケだ。
……やべぇ、苦しいな。
正直ここで、前野のこと好きになれたらどれだけいいだろう。
俺があいつを諦める手段として、前野を選んでもいいのかな?
だってなんか、前野と俺は似てるとこがあるから……。
「佐野くん、笑って」
「……え?」
前野は慈愛に満ちた目で俺を見つめると、そっと手を取った。
「告白して困らせちゃってる私が言えることじゃないんだけど、佐野くんが笑ってないと、私さみしい」
「……」
「私ね。佐野くんが一生懸命仁菜ちゃんのために頑張ってる姿がイキイキしてて好きだったの。仁菜ちゃんのそばにいるときの佐野くん、すごく楽しそうで。
……見てて辛いこともあったけど、佐野くんが笑ってるときはすごく嬉しかった」