【完】こいつ、俺のだから。
前野は笑ってそう言った。
そのまっすぐな言葉に、胸を打たれた。
「ごめん前野」
何を忘れてたんだろう、俺は。
一瞬でも揺らいだ自分がバカらしい。
昔、あいつが教室でひとり泣いてる姿をみて俺は決めたじゃねぇか。
好きなやつからもう逃げない。あいつを笑顔にしてやるんだって。
……俺が、ヒーローになってやるんだって。
俺も前野と同じだ。あいつの笑顔を見れるだけで、すげぇ幸せなんだ。
なのに。
……俺は、なにができただろうか?
1ヶ月の間に、あいつが笑えるように、幸せになれるように、俺はなにをしてきた?
自分のことばっか考えてて、あいつのヒーローになんてなれてなかった。
俺には余裕がなかった。
強くなかった。
弱くて、自分勝手な偽ヒーロー。
「……前野、サンキューな」
俺、お前の言葉で気づけたわ。