【完】こいつ、俺のだから。
恋人(仮)の関係
9月中旬。
まだ夏の暑さも残る、今日この頃。
よくわからない成り行きで、佐野に助けられた借りを返すというために、佐野と恋人(仮)の関係になったあたし。
それなりに恋人としてのルールも決め、今はなんとお昼休みに一緒にお弁当を食べてまでいる。
この関係にも少しずつ慣れ(慣れてないけど佐野いわく、習うより慣れろだそうで)、ようやく噂も落ち着き始めたある日――。
「そういやお前さ」
こないだあたしの彼氏(仮)となった佐野が、唐突に言った。
「駅前にあるドーナツ屋に行ったことあるか?」
「なにそれ」
「知らねぇのかよ。ほら、新しくできたって有名なやつ」
「あー、なんか聞いたことあるかも。行ったことはないけど」
「へ、へぇ、そうなんだ。俺は何回か行ったことあるけどな……」
両手を後頭部に当て、なぜか佐野は得意げだ。