【完】こいつ、俺のだから。
「仁菜」
「!」
いきなり佐野に名前を呼ばれるのは、やっぱりまだ慣れなくて、心臓がドキッと跳ねる。
それでも純粋に嬉しい。
その声でもっと、あたしを呼んで、必要としてほしい。
「もう絶対離してやんねぇから、覚悟しとけ……」
「……っ」
返事をする前に、あたしの言葉はまるごと全部、佐野の唇に吸い込まれていった。
何度も角度を変えて重なる唇は、
傲慢だけど優しい、不器用な佐野らしいキスだった――。