【完】こいつ、俺のだから。
「そうそう。そういうことだからごめんな。
こいつは無理。渡さない」
渡さないもなにも、あんたのもんじゃないし!!
と、言いたくても口を塞がれていて何も言えないあたし。
佐野の言葉に、男子生徒は悔しそうな顔をすると、すぐに走って行ってしまった。
す、すげ〜。
あんなにしつこかったネチネチ男をいとも簡単に追っ払ったよ。
こいつ、なかなかやりおるな……って違う!!
「離れてよ!」
あたしはいつの間にか解放された口を大きく開いて、叫んだ。
そしてグワンと腕を振り回して、こいつから離れる。
「っぶね〜」
キレイにあたしの攻撃をよけたこいつは、余裕の笑みであたしを見下ろしてきた。
さすが、背が高いだけある。
相変わらず、整った顔をしてるな。
そんなことを思いながら、こいつ、佐野悠月(さの ゆづき)を睨みつけた。