【完】こいつ、俺のだから。
「……ねぇ、なにをそんなに怒ってるの?」
「……」
やっぱり佐野は、ポチポチゲームをしている。
ドラクエ派の彼は、勇者悠月というネームでスライム達を連れて冒険していた。
……そっか。
あたしなんかよりその青い物体と遊んでる方が楽しいよね。
「……わかった。なんか怒らせてごめんね。
邪魔だと思うし、あたし帰るから」
「!!」
そう言って、あたしはドアの方へ向かおうとした。
……ん?
だけどなぜか、思うように前に進めない。
誰かがあたしの腕を掴んでいたからだ。
誰かと言っても、ここには佐野しかいないのだけど。
振り返ってみると、いつの間にやらゲームを放って、うつむきながらあたしの腕を掴んで静止していた。