【完】こいつ、俺のだから。
「お前さ」
「?」
「俺のことなめてるだろ?」
佐野の唇が、あたしの頬に触れた。
頬に、おでこに、耳たぶに、そして……
「って……ストーップ!!!」
「あぁ?」
唇に触れる寸前、あたしは手のひらを見せて阻止する。
佐野は一気に不機嫌な顔になった。
「なんだよ。キスさせろよ」
「ちょい待てちょい待て。なにをそんな切羽詰まってるんだい佐野くん。落ち着きなされ」
「俺はいつでも落ち着いてる」
「嘘おっしゃい!なんか今日は一段と様子がおかし……わっ」
阻止してたはずの手首は、いともたやすく掴まれた。