【完】こいつ、俺のだから。
「こっち向け」
「……っ」
佐野の顔が少しずつ近づいてくる。息がかかるほどに。
熱っぽい吐息に、頭が少しクラクラしてきた。
「あ、の……佐野っ」
「……?」
「ちょっと待って……。その、心の準備が……っ」
「……俺、もうだいぶ待ったけど」
「え?」
「中学のときから、ずっと待ってた」
焦り、怒り、そして寂しさ。
そのどれもが混じり合って、複雑な感情を含んだ表情。
あまりにも心細く揺れるその瞳に、あたしは目を逸らすことができない。
すると佐野は、ふいに優しいキスをあたしの瞼に落としてきた。
思わずギュッと、目をつむってしまう。