【完】こいつ、俺のだから。
「え……本当に行くの?」
「はぁ?なに言ってるんだよ。お前が連れて行ってくれって言ったんだろ?」
え、言ったっけ?
いや、いやいやいや。
佐野が言わせたんじゃ……!!
「仕方ねぇから、ドーナツくらいおごってやるよ」
「……」
こいつって、ちょいちょい上から目線だよね。
シラーッとした視線を向けてると、
「な、なんだよ。お前、行きたくねぇのかよ?」
と、ちょっと自信なさげに聞いてくる佐野。
どうしようかと思ったけど、ま、いいか。
ドーナツ好きだし、前からその店気になってたんだよね。
それに佐野が、私におごってくれるなんてめったにない出来事だ。
いやむしろ、最初で最後かもしれない。
表向きは、私が誘ったことになってるけども。
「いいよ。行こう」
あたしはお弁当のおかずを一口食べて、そう言った。