【完】こいつ、俺のだから。



「ため息つくと幸せ逃げるよ〜」



またパクッとお弁当のおかずを食べ、佐野に人生のアドバイスをしてやった。




「…………お前にはわかんねぇだろうな。俺の気持ちなんて」



ポツリ、弱音のような、本音ような、どちらともとれる愚痴が、佐野の口からこぼれおちる。




「えっ?」



……佐野?




ジッと見つめられ、ドキッとする。




……な、なに?




少しずつ近づいてくる佐野の顔。



私はお弁当を持って食べていた最中なのに、フリーズしてしまった。



わりと至近距離なところで、佐野は停止し、唇を動かす。



「……す、」



「す?」




……どうしたの?佐野。





「酢豚とか、弁当にいれるやつどう思う?」




…………。




「…………勇者だと思うが」




びっくりした。なんなんだイキナリ。



あたしに佐野の気持ちなんてわかるはずがない。



てか、世界中どこを探してもいないであろう。



佐野の〝弁当に酢豚をいれるやつをどう思うか〟なんて気持ちがわかる人は。



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