【完】こいつ、俺のだから。
なにを言い出すかと思えば……。
思わずため息がでてしまう。
「あたし、助けてなんてひとことも頼んでないし」
「へー。でもあのまま俺が助けなかったらお前どうなってたんだろうなぁ?
あの根暗男に手を握られた挙句、キスとかされてたかもよ?」
「いや、それはないでしょ」
「ばーか。あり得るんだよ。あいつ結構手ぇ早いんだぜ?」
「まじか。あの真面目そうな爽やか青年が……」
しつこいと思ったけど、それは意外だ。
「そうだ。そんな奴から俺は〝わざわざ〟お前を助けてやった。
助ける義理もないのに、〝わざわざ〟な!」
やたら〝わざわざ〟を強調してくる佐野に怪訝の視線を送る。
なんだってんだ全く。
「わかったよ。わかりました。助けてくれてアリガトウゴザイマス」
「気持ちこもってねぇ。てかてめぇからの礼とかいらねーんだよ気持ち悪りぃ」
うわっ、こいつ人の仁義を気持ち悪いって言ったぞ!
確かに感謝の気持ちなんて1ミリも込めてないけどね!