【完】こいつ、俺のだから。
……中原には好きなやつがいた。
ひとつ上の先輩。
それを知ったのは、そんなに遅くはなかった。
偶然、友達と楽しそうに話をしていたあいつの声が聞こえたんだ。
『先輩ってロングの髪が好きみたいなの。だから、伸ばしてみようかなぁ』
そいつの好みだからって、髪を伸ばし始めたりして。
そいつと廊下ですれ違うたびに、あいさつして嬉しそうな顔してたの、俺は知ってる。
なんでそいつなんだよ?
そんなヤツのどこがいいんだよ?
ずっと疑問だった。
『ねぇ、仁菜はいつから戸田先輩のこと好きなの?』
『えっ。……あ、えっとね。前に助けてもらったことがあるの。
ヒーローみたいで、かっよくて……、あたしの一目惚れ』
頬を赤らめ、恋をしているような顔で、友達と話していた中原。
なんだそれ。ヒーロー?
意味わかんねぇよ。