【完】こいつ、俺のだから。
もどかしい気持ちのなか、俺は中原の泣き声を聞きながら、やっと決心した。
ドアを開けずに、そっと外側から触れる。
この壁みたいに、中原と隔たりを作ってしまったのは、俺の方だった。
俺は自分が傷つくのが怖くて、好きなやつから逃げていた。
……だけど、もうやめる。
絶対に俺が、こいつを守ってやるって、そう決めた。
今度こそお前のSOSを見逃さない。
俺がお前を助けてやる。
『ヒーローみたいで、かっこよくて……』
いつかの中原の言葉。
ヒーローとか、意味わかんねぇと思ってた。
だけど、俺がなってやるよ。
お前が独りで、こっそり泣かなくてもいいように。
ちゃんと大きな声で泣きわめいたり、ムカついたら怒ったり、
楽しいときは心から笑えるような、そんな場所を、俺が作ってやる。
俺が、お前のヒーローに、なってやる。