無口なアオくん
だけど、あたしにどうにかすることができるはずもない
あ、誰か人呼んでくることはできるかな
「もういっぺん言ってみろよ」
「じゃま」
ひぃぃーー!
何言ってるの!本当にバカだよ!
とにかく誰か大人を…
そう思って路地を出ようとすると
幸運にもお巡りさんを見つけた
「あっ!お巡りさーん!!」
大声でそう呼ぶと、男の人は殴ろうとする手を止めた
「ちっ」
あたしのその声を聞いて
男の人は舌打ちをして、すぐに路地から逃げ出した
「待てーー!」
それをお巡りさんが追いかける
あっという間に、路地にはあたしと
男の子の二人になった
でも彼は
一人でそそくさと前に路地を抜けていこうとした
あたしは唖然として
動けずにいた
だってすーーごく
怖かった……
だけど目の前を淡々と歩いていた彼は
ふと、立ち止まり
振り返った
そのままじーっとこっちを見てる
ん?後ろに何かある??
そう思ってあたしも振り返るけど
後ろにはただの道
あれ?………あたし?
そういえば、私を助けようとしてくれたんだよね
まだお礼言ってなかった!
彼はまだあたしを見ている
あたしはその彼に向かって
できるだけ声を張って
「あの、助けてくれてありがとう!」
思い切ってそう言うと
「…?」
彼は不思議そうな顔をした
「え……さっき、あたしのために言ってくれたんだよね?」
「……別に、じゃまだっただけ」
あ、あれ……
でも結局は助かったわけだし
「ありがとっ!」
笑ってそう言うと
彼は何も言わず
また前に向き直り、歩いて先に言ってしまった
あたしはその背中を
遅刻ギリギリになるまでそこで
見つめていた