無口なアオくん






あの後急いで



なんとか遅刻をまぬがれたあたし



学校に着くと



掲示板にクラス名簿が大きく貼り出されていた




それにしてもさっきの男の子





…ほんと、不思議な人だったなぁ




気を取り直して



あたしは掲示板を見た





ええと、あたしのクラスは…



「あ、あった!」



……うーん




見つけた、のはいいんだけど




知ってる子が



誰もいない!!!




うそでしょー…



あたし高校生活、上手くやっていけるのかなーー





あたしは少し肩を落としながら



あたしのクラスの教室へ向かった





教室にはやっぱり



あたしの知っている人はいなくて…




「んっ」



…え!?



見ると目の前の人がプリントをあたしにまわしてる



あたしが気づかなくて、ずっとプリントを持ってたらしい




「……あ、ごめん!!!」




てか、あれ?



この前の席の人……




さっきの男の子!



彼は手だけをこっちに向けて



顔は見えないけど




さっき後ろ姿をずっと見てたから、間違うはずない




よ、良かった!




一人知り合いが…!




ん?知り合い…なのかな?



てゆうかあたし、この人の名前まだ知らない





「あ、あの!」



あたしは彼の背中をちょん、と叩いた




するとやっと彼は振り向いてくれた



う…やっぱりカッコいいな





「な、名前を…教えてほしーなぁって…」



うぅー、意識したらなんか変な言い方になっちゃったよー




けど彼はそんなことを気にする様子もなく




「田中」



それだけ言って



また前を向いてしまった





苗字だけじゃなくて



下の名前も知りたかったんだけどなぁ





でも、また彼を振り向かせる勇気が



あたしに残っているわけもなく




はぁー…



唯一の知り合いがこんなんで




あたしこれから



このクラスでやって行けるの?







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