引き籠もりの双子の姉を救った俺。
トントントン。
包丁でミルクチョコレートを細かく刻んでゆく。
いい匂いが漂うので、
つまみたくなったけど我慢我慢。
刻んだチョコを湯煎で溶かし、
型に流し込む。
そして冷蔵庫に入れて冷やすだけ。
う〜ん、なんだか物足りない。
私は首を傾げた。
やっぱり、チョコじゃなくて、
クッキーとか作ろう。
冷蔵庫の戸を開き、
冷たい空気に耐えながらも、
小麦粉とかはないか探る。
しかしなさげだ。
買いに行く。
その言葉が脳裏に過る。
私は未だ、広樹なしで外に出ていないのだ。
広樹がいたから、
今までの数回なんとかなった。
だからこそひとりは、不安で仕方がない。
でも、今しかないと思った。
せっかく買いに行こうと思ったんだから、
突き通して、これを気に、
ひとりでも外に出られるようになりたい。
私は背中で結んだエプロンのリボンを解き、
そう決意した。