引き籠もりの双子の姉を救った俺。
「似合う、かな?」
上目遣いでそう尋ねられた。
これ、バレンタインだからだよな。
きっと、特別な日だからいつもより
オシャレというか変化をもたせているのだろう。
「どーだろうなあ」
俺はわざと、焦らすように言う。
案の定困惑した表情を浮かべた由紀。
「ひ、広樹くんを思ってやったんだよ?」
だから、ね?褒めて? と
ヒシヒシと視線で訴える由紀。
「うんうん、可愛い」
「あーもー!なんで笑ってるの!」
「いやでも、ガチで似合ってるよ」
「ガチですか?」
真顔で俺が言うと、
華やかな笑みを浮かべたので
花を撒き散らされているように錯覚する。
「なぁにイチャイチャしてんのさ!」
「すみちゃんおっはよー」
俺ら…特に由紀に声を掛けてきたのは、
由紀と仲良しの平沢という女子。
この子も由紀と同様に人気があるのだが、
彼氏とか浮ついた噂は一切ない。
少なくとも俺は聞いたことない。