引き籠もりの双子の姉を救った俺。
11月中旬の、ある祝日の正午。
「じゃあ、ノート買ってくるよ」
と、生まれた順でいえば、
弟となる広樹が告げた。
ベッドに大の字になる私を見て、広樹は少し、
悲しんでいるようにも見える。
私のボサボサの頭は、しらみでも
湧きそうなレベルで不潔だ。
床屋?にも、ずっと、行っていないし、
お風呂もスピーディに済ませる。
最後に櫛でとかしたのはいつだろう?
そんな、だらしなく伸びきった髪を見て、
広樹のともだちもキモチワルイ、
と思っただろう。
きっと、私が去ったあと、
汚えヤツ、と言われたに違いない。
私はベッドの脇に置いたメガネを取り、
片手でなんとか掛ける。 その扱いが雑なので、
黒縁のフレームは、とうに緩んでいる。
視界がぼやけた。
私の涙ではなく、
メガネのレンズについた、涙痕で。