引き籠もりの双子の姉を救った俺。
広樹は…
寄り道でもしてるのだろうか、
まだ帰ってきていない。
最近友だちと遊ぶのが増えたのもあり、
私と会う回数も減ったのだ。
私が食べ終わるまでに帰ってきたら
気まずいだろうな、
と思いつつ、椅子に座った。
「ただいまー」
広樹の声だ。
私はそれだけでアタフタしてしまう。
「おかえりー」
お母さんがキッチンからよく通る声で返す。
お母さんは私たちが生まれる前まで、
故郷の商店街の八百屋で働いていたとか。
母方の祖父が経営していた八百屋で、
そのひとり娘のお母さんは、
商店街の小町と呼ばれていたという。
らっしゃいらっしゃい〜とか掛け声をしている
お母さんの様子は、目に浮かぶ。
実際見たことないけど。
「飯出来てるー?」
呑気な広樹の声が近づいてくる。
私は俯いて、
広樹の方に目を向けることはしなかった。
「はーい、今できたわよー!」