甘くない現実
「言えよ。イライラするなー。」
「え……だって……聞いてどうするの?」
「は?だから、なんだよ、一応って。」
「一応は……一応だよ。」
「でも結構きちんと包んであるじゃん。その……本命っぽいやつ。それを一応とか言われたら、気になるじゃん。」
「うん。」
ホント、一応ってなんだよ、一応って。それを突っ込み続けたら、彼女はしばし黙ってしまった。
しばらく考えて、ようやっと決心したのか、彼女は口を開いた。
「一応は外そう。そうそう、あげるよ、これ。」
きれいにラッピングされた、それは、おそらく本命とおぼしきチョコレート。
「なんだその、開き直り。」
「いや、だから……その……」
彼女はおずおずと、その本心を話し始めた。頬をほんのり赤らめながら話すその様子に、僕はなぜか期待してしまった。
「いや……悪いかなーって思ったんだけどさ。」
いや、悪いってことは、ないんだけど、期待していいのか?
「でも、自分で食べるのも何となく気が引けてね。」
自分で食べないってことは、誰かにってことだろ。