貴方を忘れない
出稼ぎに出てから
こちらから
電話をする事ができなくなった。
と言うのも
彼が行ったのは長野の
とある野菜を作る農家
その頃、彼は
携帯も持っておらず
農家に泊まりで働くため
彼が徒歩で30分
山道を行き来して
公衆電話のある所まで行く他に
連絡手段がなかったのだ。
そして、しばらくすると
『手紙を書く』と言う事になった。
彼は口下手で
電話ではあまり話さないし
高いテレホンカードが
数分で
なくなってしまう程
遠距離通話だったので
出費も痛かったりして。
もともとが
文字での会話から
始まっていた事も手伝って
彼との手紙は
何より貴重で
素直にたくさんの事を話せる
二人にとって
大切なものになった。
普段絶対に口にしないような
『好き』も
『愛してる』も
文字では伝えてくれて
汚い字が、尚更可愛くて
私も、書き切れない程書いて
分厚い封筒を送った。
そんなある日
夏の期間だけの
仕事だったのにも関わらず
休暇がもらえる事になった彼は
体力仕事でボロボロなのに
会いに来てくれると
言ってくれた。