貴方を忘れない
1999年-夏-
春の日差しに
強みがまして
空は青さに磨きをかけて
半袖でも
汗ばむくらいの季節。
ただでさえ暑いのに
私は興奮し過ぎて
顔は真っ赤だし
髪の毛はくっつくし…
「おーい!やっほぉ~」
緊張し過ぎて
他に
声のかけようもなく
マヌケな第一声。
彼が、ニッコリ笑う。
「ごめんね!わざわざ…
遠かった?
疲れたでしょ?
このまま家行こっか」
私は
緊張すると
沈黙に耐えられない質で
必死で言葉を探す
「や、大丈夫。
でもやっぱ
疲れてはいるかな?
行くか~」
思ったより
落ち着いたイントネーションで話す彼。
家には
彼を一目見ようと
母の友達も
姉も
姉の彼氏も
もちろん母も
まるで
芸能人でも待つかのように
待ち構えていた。
「お疲れ様~
良く来たね~
移動だけで大変だろうに。
何か飲む?」
母は元々気さくなタイプだけど
良い感じのお出迎え。
マミー!グッジョブ!
と心の中で親指を立てる。
「いきなりお邪魔して
しかも泊まるなんて
ほんとに、すいません。
娘さんと
お付き合いさせて頂いてます。
今日は、ありがとうございます。」