貴方を忘れない
駅まで迎えに来ていた彼と
家のある、団地へ
バスに乗って向かう。
窓から見える景色は
今でもハッキリと覚えている。
広い道路、ローカルスーパー
田舎だけど、心地良い風景
大きくゆるやかなカーブを曲がると
遠くに大きな坂が見えて
右手側には
団地が広がる
少し古ぼけた緑色の金網に囲まれていて
エレベーターもない。
バスが止まり
二人で道路を渡って
団地の中へ入る。
「きたねぇけどな(笑)」
そう言いながら
部屋の中へ入れてくれた。
たしかに散らかり放題で
壁にはおっきな穴があいている。
私の気配に驚いた飼い猫が
そーっと隠れてこちらを伺う。
「おいでぇ~こわぃね~大丈夫だよぉ~(笑)」
「こわくないってばっ!なんでよっ!」
ふざけて猫を抱き上げる彼に
不信感が薄れて行く。
同居の伯父さんは仕事でいない。
彼から猫を渡されて
フワフワの毛に指を埋める
頬擦りをしながら奥へ進む。
奥と言っても
入って数歩でもう
寝室兼、生活スペースだ。