貴方を忘れない

「お前おもしれぇなぁ(笑)」

彼が笑うのだけれど
私にはそんな余裕なくて

「ちょっと、面白いってなにぃ?」

「あ…ちがう間違えた。
お前ほんと、かわいいな」

顔から火が出るどころじゃない
本当にクラクラっと
倒れそうになった
その時の感覚は
それ以降味わった事がない。

「顔真っ赤だし」

と言いながら
キスをして
布団に二人で倒れこむ

「ほんとに俺でいいの?」

「でいいんじゃなくて
じゃなきゃヤダの」








夏の風が生温い
汚い部屋で
ムードのかけらもない平たい布団
そこは
私が幸せになれる
唯一の場所

何もなくて良い
この人に愛されて居たい
彼のために生きたい
それが自分のためだから
彼の笑顔を守りたい
それが私の笑顔になるから




セカンドバージンは
少し、痛かった
でもそれは
疑った私への罰だと思った




「うち、生でしたい」




1度目を終えて
二人でタバコを吸いながら
唐突に口を付いた
その言葉

彼の困った顔が
とても悲しくて
冗談混じりに誤魔化した。

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