幕末バレンタイン【企画短編】
ば、馬鹿にして……。
この人の口癖だよ絶対、“アホ”って。
……うぅ、ムカつく。
言われ慣れてるけどやっぱりムカつく!
何か言い返したい……と思いつつも、そんな言葉は思い浮かばなくて。
「しょうがないじゃん、久し振りに卵触ったんだからっ。せっかく山崎の為に頑張ったのに笑わなくてもいいじゃん……」
「俺の為?」
「へ?……ぁ」
言い訳と一緒に、出てしまった。
もう一度言い訳を重ねようにも、山崎は徐々にこちらに近付いてきた。
そして、カタンと、あのお椀を持ち上げる気配。
「これ……」
「……」
床を拭きながら、ちらりと、こっそり上を見上げる。
お椀の中をじっと見ている山崎。