幕末バレンタイン【企画短編】
……駄目だ、見られない。
すぐ下を向いて、赤くなっている顔を見せまいと目を瞑る。
緊張して……
だんだんに、心音が速まっていく。
「……初めて食べた、こんな甘味」
「う、うん……ごめんね美味しくなくて」
山崎は少し食べたのか、またカタンと音がした。
はぁ……と私は肩を落とす。
「お前……アホか?」
「うっ、またアホって。けどね、料理とか出来ないんだよ……ほんとにアホかもしれな……」
──グイッ
まだ言葉の途中の時、いきなり後ろから、暖かい体温と力強い山崎の腕を感じた。