幕末バレンタイン【企画短編】
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ぶくぶくと、鍋の中で泡だっている飲み物。
茶色で、甘い匂いが漂っている。
ホットチョコレートだ。
窓から空を見上げれば、煌々と輝きを増している満月。
「土方さん、まだ仕事かな……?」
出来上がったそれを外国製のマグカップに流し込むと、土方さんがいる部屋へと向かった。
カラッと襖を開く。
そこには、筆を持ったまま机に突っ伏して寝ている、土方さん。
その背中に近付き、コトン、とマグカップを置いた。
それから、側にあった掛け布団を、土方さんに被せる。
「ふふ、寝顔かわいい……」
小さな声で呟き、もっと見ようとしゃがみ込んで、机の端を手で掴む。
仕事仕事って気張っていて、厳しい顔をしているのがほとんどだけど。
こうして、すっかり夢の世界に開放されて、すーすー寝息をたてている土方さん。