幕末バレンタイン【企画短編】
「いつもありがとうな。……今日も“ここあ”を作ってくれたのか?」
その時、ふわふわと湯気が立っているホットチョコレートの存在に、土方さんは気付いたようだった。
「あ、今日は……」
と、言いかけて、やっぱり飲んでからのお楽しみにと思い口をつぐむ。
今日はバレンタイン。
だけどこの時代、材料があんまりないから、作れるのはこれくらいしかなかった。
いつもは、温かいココアを土方さんに入れてあげるんだけど。
今日は特別。
土方さんはマグカップを傾けて、一口飲んだ。
「ん……“ここあ”も甘いけど、それよりも甘いな」
「口に合えばいいんですけど……」
小さく、美味しいと呟いて、土方さんはまた口にした。
「それ、チョコレートっていう食べ物の飲み物なんですけど……」
「ちょこ……れいと?」