幕末バレンタイン【企画短編】
「……芳乃、何やってんだ」
「あっ」
台所の入口から、こそっと山崎が顔を出していた。
私の好きな人。
新選組で、私も山崎も同じ監察方だった。
明治時代に変わった今は、そうではなくて……とある人の家に匿ってもらっている。
「えっと……」
まだ、山崎にあげる心の準備が出来てないんだよな。
私は振り向いて、背中の後ろにチョコを隠し、山崎の方を向いた。
山崎の頭の上には、大量の疑問符が……。
「あっ、あれだよあれ!台所の掃除!」
「……そうか?」
「うん!
やらないとちょっとやばいかなぁ、と……。
汚いし、ね?」
そう言いながら、背中の後ろにあるチョコが入ったお椀を、なるべく奥へ奥へ……と押しやる。