リトライ。
陽介は言った。
「素直は素直!」
彼はよく意味が分からないと言ったような顔をしていた。
「もう、いいでしょ」
それから、日が暮れるまで練習をした。
時間なんか忘れて夢中になってシュートを打っていたら、中に人が入って来て我に返った。
「そろそろ帰るぞ」
そう声をかけて来た男の人。
その人は目元が誰かさんにそっくりだった。
「親父!」
やっぱり陽介のお父さんだ。
ゆっくりと視線がこちらに向けられる。
「キミが沙奈ちゃんかい?」
「あ、はい……初めまして風川沙奈です。
今日は練習させて下さりありがとうございます」
「陽介からよく聞いているよ。いつも沙奈ちゃんの話をするから一度会って見たくてね」
いつも?
「な……っ!親父適当なこと言うな!いつもなんて話してねぇだろ」
「話してるだろう。ことあるごとに沙奈ちゃんの話だ」
かあっと赤くなる陽介を見て、私もつられて顔が赤くなった。