リトライ。


陽介は言った。


「素直は素直!」


彼はよく意味が分からないと言ったような顔をしていた。

「もう、いいでしょ」


それから、日が暮れるまで練習をした。

時間なんか忘れて夢中になってシュートを打っていたら、中に人が入って来て我に返った。


「そろそろ帰るぞ」


そう声をかけて来た男の人。

その人は目元が誰かさんにそっくりだった。


「親父!」


やっぱり陽介のお父さんだ。


ゆっくりと視線がこちらに向けられる。


「キミが沙奈ちゃんかい?」

「あ、はい……初めまして風川沙奈です。

今日は練習させて下さりありがとうございます」

「陽介からよく聞いているよ。いつも沙奈ちゃんの話をするから一度会って見たくてね」


いつも?


「な……っ!親父適当なこと言うな!いつもなんて話してねぇだろ」

「話してるだろう。ことあるごとに沙奈ちゃんの話だ」


かあっと赤くなる陽介を見て、私もつられて顔が赤くなった。

< 112 / 266 >

この作品をシェア

pagetop