リトライ。


そんなに話してたんだ……。


嬉しいようでむずがゆい気持ちだ。


もう一度陽介に視線を移せば、彼は照れた顔で「違うからな」とつぶやいた。


「わ、分かってるよ!」


それから私たちは道具を片付けると、倉庫に鍵をかけ体育館を出た。


陽はすっかり落ちていて辺りは暗くなっている。

陽介のお父さんが戸締りを3人で校門までやって来た時。


「沙奈」

後ろから声をかけられた。

振り返って見てみると、そこにいたのは買い物袋を下げたお母さんだった。


「お母さん!」

「ここで練習してるってメールが入ってたから、来ちゃった」


私がかけよると、お母さんに気づいた陽介のお父さんが挨拶をする。

陽介もぺこ、っとお辞儀をすると、ふたりは少しだけ会話をしていた。


「じゃあ、また明日な」

「うん。またね」


話が終わると、私たちは手をふってそれぞれの家に帰って行った。


楽しかった。


陽介との練習。


陽介の迷いのないシュート。


すごく好きだ。


まっすぐにゴールだけを見る……か。


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