リトライ。


下を向くことだけが弱さじゃない。

上を見ていても存在する弱さがあることに気がついた。


「悪いな、なんか暗い雰囲気にさせちまって」

「ううん。ありがとう、庇ってくれて」

「あれは別に……深い意味はねぇからな」


ポリポリと鼻をかきながらそっぽを向く陽介に私は小さく笑った。


「それにしても推薦ってすごいね」

「今のコーチが俺に声をかけてくれたんだ、諦めないで済んだのもコーチのお陰かもしれねぇ」


へへっと嬉しそうに笑う陽介。


推薦……か。

実力が足りなかったって陽介は言うけど、選ばれてこの学校にやって来たんだよね。


やっぱりすごいなあ……。


周りとは違う人よりも秀でてるところがある。

それを他人から評価されるなんてもっとすごいことだ。


陽介の背中を見つめる。


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