リトライ。



好きだって言ってしまいそうになる。


すると彼は嬉しそうに言った。


「沙奈は変わらないよな」

「変わらない?」

「うん。俺さ、沙奈の人のことにも一生懸命になるところ……好きなんだ」

「ど、どうしたの急に」

「いや、言いたくなっただけ。

人のバッシュ選ぶのにもすごい真剣に選んでくれるだろう?

そういうところいいなって、ずっと思ってた」


今日の陽介、なんかズルい。


意識しないって決めたのに。

気づけば意識してしまっている。


きっと誰にでもそう言っているんだろう。

彼に特別はない。


誰にでも優しくて、誰にでも笑顔を見せる陽介。

だからこそ、色んな人に好かれていく。



「分かった。いいやつ、選ぶね」


私はかなりの時間をかけて陽介にピッタリのバッシュを選んだ。


動きやすさとデザインと軽さ。

あとは履いてもらった感じで良さそうなものに決めた。


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